落鳥の瞬間

ボランティアか、趣味か・・・曖昧ですが、
たまに保護された野生動物の世話をすることがあります。
野生動物なんて野生のものなのだから
放っておくのが一番だと思っていた。
「怪我した野生動物がいても保護しない」
そういう方針の動物病院も多い。
自分がそう思うのは、保護した後元気にさせて、
野生に帰す自信がないからだろう。

「落鳥」とは・・・
単に落ちた鳥かと思っていたが、
愛鳥家の間では、鳥が亡くなることを落鳥とも言うらしい。
雛を落鳥させてしまった、などと。

鳥は苦手意識(嫌いという意味ではなく)がある。
自分の同居人は鳥が本当に苦手の様子。
なのに、懲りずにまた世話してしまいました。
おそらくガラスにぶつかって落ちていた鳥を自分で見つけてしまったのです。
あまりにも小さい野鳥で、見逃してしまうところでした。

一度自然に帰すために飛ばせてみたが、心もとない飛び方で
地面に落ちてしまった。

鳥のお世話の経験豊富そうな方は忙しく、私が家に持って帰った。
動物性たんぱく質を与えると良いとのことで、ドッグフードなどが良いとのこと。
しかし、家には犬はいないので、この際ウサギ用の餌でも
良いだろうと言われた。
よく考えてみたら、我が家にはハムスターがいた。
ハムスター用のペレット(実験動物用の)は、ドッグフードの様な匂いがする。
きっと魚粉でも入っているのだろう。
お湯で溶かしてみたが、これが固くて溶けない。
鳥も食べようとしない。
ウサギ用の餌を溶かしてみたが、食べない。
もう駄目かもしれないと思ったが、最善を尽くすため鳥用の餌を買ってきた。
落鳥した際に必要になる冷凍用のバッグも買ってきた。



くちばしを開けようとしない。
ツベルクリン用のシリンジで水を与えようとするが、飲まない。
仕方がないのでくちばしの先に水滴をつけるが、
体内に入ることはない。
もう長くは持たないだろうと悟った。
でも明日まで持たせたら、誰かが何とかしてくれるかもしれないとも思った。
経験のない自分にはどうすることもできなかった。
経験豊富な方なら、シリンジとゾンデで強制給餌できるかもしれないが。
家にはシリンジぐらいしかない。
鳥なんてまともに飼ったこともない。

ホッカイロで段ボールを保温し、時々様子を見た。
また突然元気になることを信じて。
「おまえ、剥製にされるぞ」
そう話していたら、突然元気になることがあった。
「サザエよ、冷凍庫に入れる準備はできてるからね」
ミソサザイだから、名前はサザエにした。

もう眼を開けるのもしんどい様子だった。
鳥は餌を食べないとすぐに駄目になるそうだ。
手の平に乗せた。
まだ息はある。温かい。
最後の瞬間がやってきた。
突然、両方の羽をはばたかせた。痙攣したのかもしれない。
素人でも様子がおかしいと気づく。
体が細かく震えている。
それまで縮こまっていた体が伸び、両足も痙攣しながらピンと伸びた。
永眠したのだと分かった。
それまで閉じていた眼を見開いたまま息絶えてしまった。



拾わなかった方が良かったのか。
もうこれに懲りて鳥の世話はしないようにしたい・・・。


影の薄いハムスターやチンチラのブログ

適当な手記 へ戻る